なぜ人は優しくするのか?なぜ人には「良心」があるのか?

我々人間は「優しさ」「良心」を持っており
そのため(ほとんどの場合を除いて)道ですれ違う人に
いきなり殴りかかったりすることはありません。

また、道で困っている人に遭遇すれば
(よっぽどのことがない限り)助けを差し伸べます。

ではなぜ人間は優しいのでしょうか?

(信仰心を持っている人の中にはいわゆる神様が「優しさ」や「良心」を与えたのだと考えている人もいるようです)

今回はその理由について生物の進化の観点から紹介します。

 

地球上にいたのは現生人類だけではなかった

我々人類は「ホモ・サピエンス」と呼ばれ、約30万年前に出現しました。

そして今では我々ホモ・サピエンスだけが生き残っています。

しかしホモ・サピエンスが出現してから現在に至るまでには
少なくとも4種類の人類と地球を共にしていました。

つまりホモ・サピエンス以外のその他人類は絶滅し
なぜかホモ・サピエンスだけが生き残ったというわけです。

その理由は一体なんでしょうか?

我々が他の人類より賢く、知能が高かったからでしょうか?

それとも他の人類よりも物理的に力が強く
屈強だったからでしょうか?

 

ホモ・サピエンスが生き残れた理由

上の理由は全て的外れです。

実際にホモ・サピエンスよりも頭の大きかった人類はいましたし、
またホモ・サピエンスよりも屈強な体を持っていた人類もいました。

にもかかわらず生き残ったのは我々だけです。

ただ、ホモ・サピエンスには他の人類と比べると

最も友好的で協力的だった

という特徴があり、これこそがホモ・サピエンスが生き残れた理由であると考えられています。

このような温和な気質を身につけたため
ホモ・サピエンスは異なる集団とも関わるようになり
遠くの地と交易ができるようになり
知識やものを交換ができるようになりました。

そして精緻化された「社会」が生まれ、協力することを覚え
その協力によって文明はさらに発展し
さらに代々伝えられてきた知識を受け継ぐこと
が可能になったわけです。

このようなことは「温和な気質」を有していない
他の人類にはなし得ない芸当でした。

こうしてホモ・サピエンスは
瞬く間に地球上を支配しました。

我々現生人類の

攻撃性を低下させ、優しくなる

という生存戦略が功を奏した一方で、その他の人類は

優しくなかったから
生き残れなかった

わけです。

以上を一言でまとめると

『なぜ人は優しくするのか?』
という問いに対する答えは

優しくなければ
生き残れなかったから

ということになります。

なので人が優しいのはその人の「意図」ではなく
もっぱら「本能」であり、進化の過程の自然選択によって得られた物であると考えた方が良さそうです。

 

そんなことがどうやってわかったのか

では上述のことはどのようにして判明したのか。

上記のようなことがわかったのは

昔のホモ・サピエンスの化石

のおかげです。

人の行動を制御するような神経ホルモンは
骨格に影響を及ぼします

例えば「テストステロン」という物質は
(直接の原因ではないですが)攻撃行動の調整に関わっており
この量が多いほど眉上弓は太くなり、顔は長くなり、男性的な顔に近づきます。

そしてホモ・サピエンスの化石を調べると約8万年前を境に
それ以前の頭蓋骨より、それ以後の頭蓋骨は
より短くなっていることがわかっているそうです。

これはテストステロンの減少を示しており、つまり

攻撃性が下がった

ことを示しているわけです。

さらに「セロトニン」という物質には人を協力的にし
他者を傷つけようとする意思を抑える働きがあり、
さらに頭蓋骨の形も変え、より球形になることがわかっています。

そして実際ホモ・サピエンスの頭蓋骨は
他の人類種と比べても球形であるため
セロトニンも頭蓋の縮小と攻撃性の低下に関わっているとも考えられています。

以上のような頭蓋骨の変化によって
その攻撃性の低下や優しさの獲得といった
人類の進化を推測することができたわけです。

 

このホモ・サピエンスの生存戦略における

協力がより文明を発展させた

というのは、協力することの大切さを再認識させてくれます。

個の力ばかりではなく集団の力を利用すると
思うように進んでいないことも
上手くいき始めるかもしれません。

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